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高くない利息を払っていれば

2013年12月17日

質屋に持参したスイス製の腕時計は、意外にも高く評価され、
アルバイト1週間分の給料ほどの金が借りられた。

「すき焼きが食いたい」
僕の声を受けて、二人はその足で街へ向かい、食材を買い揃えた。
金がないのに贅沢な気分を味わいたいのは螢幕保護膜、なぜなのだろう。

深夜。
あたりの2部屋が寝静まった頃、ガスコンロを無断借用してひそかに料理が開始された。
鍋や食器、ろくなものはなかったが「無駄な出費はやめよう」とトオルくんは言い、
鉄鍋の代わりに、小さな手鍋とブリキの洗面器が代用された。

故郷を出てから口にしていなかったすき焼きの味は、感動的にうまかった。
二人の顔がほころんだ。

「バイトの給料が出たら、あの時計を出しに行くんだからネ」
「わかってる。オレも半分出すって曾璧山中學。利息を払えば質草は流れないんだ」
一足早く社会に出たトオルくんの知識はさすがだと思った。

高くない利息を払っていれば、質草はずっと保管してくれると知った僕は、
アルバイトの給料後も、スイス製の腕時計を受け出しには行くことはなく、
当面は利息を払うだけで、「いつかはきっと」とその時期を引き延ばした。

そうしているうちにアルバイトも辞め、利息が払えなくなって、質草は流れた。

それからしばらく、僕は暇さえあれば、
質屋のショーケースに飾られた自分の腕時計を眺めては、
「まだ売れていない」と胸をなでおろしたりした。

だが、とうとうその時計がショーケースから消えていることを確認する日がきた。
苦い思いが胸にひろがり曾壁山中学
無愛想に僕に時計を差し出したときの、父の顔が浮かんだ。 


Posted by fridayne at 15:09Comments(0)記事